体ひとつあれば


近所にある、中延商店街。
僕はそこの地下室で歌の練習をしている。


今日も練習をしたかったので、おじさんに連絡する。

「いやー、大仏さん。今日は駄目なのよ。今日、中延寄席でね。楽屋であの部屋使っちゃうのよ。」

そうか、そういやでっかい垂れ幕がかかっていたな。
昨年、コバエがホイホイの記事を書いた時に見た垂れ幕と、同じ位置だった。

「コバエがホイホイ」 本当の使用上の注意とは
http://d.hatena.ne.jp/yumesalary/20100710/p1


自分で作っている曲の練習をしたかったのに、残念だ。。。


「良かったら、見に来る?2000円だよ。ゴンタロウもくるんだから!」


何?ゴンタロウ?誰それ??
若者の反応はこんなものだ。
どうやら凄い人らしい。
軽い気持ちで行ってみる事に。



見た後、ゴンタロウさんは凄い人なんだろうというのは十分、分かった。
勉強させていただきました。


【演目】
※大仏がウィキペディアを駆使して調べたので、恐らくあってると思います。
※備忘録のため、一行まとめ



・狸札
柳家おじさん
→狸が助けてくれた人間に恩返しをするために、お札に化けて奮闘するお話


・宗論
柳家ほたる
→息子がキリスト教徒になってしまって、怒った浄土真宗のお父さんの親子ゲンカの話


・締め込み
柳家さん生
→泥棒が盗みに入った家の夫婦ゲンカを止める話


・井戸の茶碗
柳家権太楼
→頑固な2人のお侍さん?の間を行ったり来たりで苦労が絶えないリサイクル屋さんの話



2h。あっという間だったなあ。

若い人なんて自分くらいしか居なかったから、
最初、笑っても良いのかなと身構えたけど、すぐに自然に笑ってた。


表情とか、間の取り方とか、セリフの緩急とか。
プロは本当に違うなあ。
テクニック的な所を見ようかと思ったけど、まず「落語」存在、システムの重み、雰囲気にやられた。


その集大成みたいな感じで、最後にゴンタロウ師匠(カタカナ表記はマズい?w)が登場された瞬間には、
初見の落語超初心者といえども、その深さとか濃さみたいのが、ビンビンに伝わってしまうのである。

かっこ良かった。



初めて、落語を生で聞いた。
マイクも何も無い、商店街の一室で。
座布団と体と、扇子?があれば人を魅了できる。
お金をもらえる。

これって、とんでもなくすげー事だなあ。
当たり前のことを思う。
雰囲気が良いよな。プラスのオーラしかないというか。


浄土真宗とキリスト教の親子の口論を面白おかしく語る「宗論」が、個人的にはすごく良かった。
自分の中でも、こういうのを笑い飛ばしてみたい、というテーマはある。

ウィキペディアで調べてみると、笑点でお馴染みの腹黒紫着物噺家「三遊亭圓楽師匠」の得意ネタらしい。
なるほど。何か納得で、圓楽師匠ならどうやって表現するのか、観てみたいなと思った。

今日見た、柳家ほたるさんも観客を見事に魅了していた。本当にすごいなあ。


帰り道、チューハイを買う。
あまりに向こう側の世界が眩しい。
人を魅了する世界というのは、すごい。
基本的にお酒は飲まないが、こういう時は飲まないとやってられない。

後ろを歩く老夫婦も寄席に来ていたようだ。


「会場が満席だったから暑かったわよね。汗びっしょりで大変よね」
「そうだね。大変な仕事だよね」


穏やかな会話が聞こえる。
商店街を通り過ぎて、暗い通りになる。
僕は一人、飲めない酒を飲みながら帰る。

多分、穏やかな夫婦にも何かしらのドラマがあって、長年大変な仕事をしてきたからこそ、穏やかに暮らしていて。
今日の噺家の皆さんも、芸の道を追求するという大変な仕事して、また次の会場で人を笑わすのだ。


さあ、僕はどうしようか。
明日も仕事をする。
それが大変なのかどうかは、自分が決める事なんだ。


あまり、悩んでる時間は無い。
やるかやらないかだ。