スーツという衣装を着て「社会人」というコントを演じる事になった人たちへ

春が来ました。

うちの会社も4月1日は入社式だったようだ。

駅では、新社会人と思われる団体を発見。

僕も4年前は、あんな感じだった。

「社会人」としてのスタートはとても緊張したのを覚えている。

何事にも、おっかなびっくり。みたいな。

就職が有利だった2007年入社の僕に比べたら、

就職氷河期の2011年入社の人達は、より優秀なのかもしれない。

そして、おそらくだけど。

より慎重になっているに違いない。

せっかく企業に入社できたんだから、「社会人」として失敗したくない!

そんな事を思っているのではないだろうか。


勝手に心配になったので、老婆心ながら、言いたいことを、言いたいと思う。

大卒の新社会人に向けて、ちょっと偉そうに書いてみる。

最近はてブで見かけた、ゲームクリエイター飯野賢治さんの文章が素晴らしすぎたので
意識して書いてみる。

eno blog 息子へ。
http://blog.neoteny.com/eno/archives/2011_03_post_514.html

「社会人」としては先輩だし。

まあ話半分に聞いて欲しい。


  • 「社会人」というコントを演じる準備をしよう


キミは明日から研修を受けるだろう。

もしくは、すぐに現場で、先輩からOJTという名の指導を受けるだろう。

それは、「社会人」となるための一歩だ。


キミの会社の歴史を学ぶだろう。

キミの会社のサービスや製品について学ぶだろう。

これは、キミたちが選んだり選ばれた会社によって1人1人違う内容。


そして、もうひとつ。

多くの人が共通のルールを学んでいくことになるだろう。

それは「社会人になるためのルール」だ。

ちょっと変わったルールだ。

アルバイトくらいしか経験できない学生時代には習わないから、戸惑う人も多いかもしれない。



敬語ができるようになるとか

電話の受け答えが上手くなるとか

タクシーに乗る時、どういう順番で乗れば良いのかとか

エレベーターに乗ったら、どこにポジションをとるべきなのかとか



こう書くとちょっとマヌケだけど。


一生懸命、覚えて欲しい。


「スーツを着て働く」という事は、「社会人になるためのルール」を守らなくてはいけないという事だ。


もっと簡単に言おう。


キミは「社会人」というコントを演じる事になった。


主人公は当然キミなんだけど、「社会人」という役回りを与えられた。

どういうセリフを?どういう表情で言えば良いの?

いきなり言われても、右も左もわからないよね。

まずは設定を学ばないといけない。


ここでひとつ例え話をしてみよう。

キミは「Mr.Bater」というコントを知っているかな?


ダウンタウンのごっつええ感じ」という番組で人気があったコントだ。

キミは僕より4つくらい学年が下だから、もしかしたら知らないかもしれない。

時間があったら見てみてね。

Mr. BATER
http://www.youtube.com/watch?v=wgsfFH4Aa8g


パーティに行かなきゃいけない大阪弁の外人(?)ダウンタウン松本さんが店にやってくる。

店員の今田耕司さんが商品を持ってくる。

それに対して松本さんがノリツッコミをする。


当時小学生だった僕は、毎週このコントを見て、腹を抱えて笑った。


それは「ノリツッコミ」という新しいボケ方を知らなかったから。
そして毎回繰り返される「外人と店員のやり取りと設定」が、抜群に面白かったから。


このコントには、色々なルール設定があるんだ。

今田さんは喋ってはいけない。
松本さんは必ずノリツッコミをしなくてはいけない。
一発目のノリツッコミは必ずインディアンの衣装。
アドリブで松本さんが今田さんのプライベートをばらす。
2人で協力して息を合わせる場面がある。


「スーツを着て働く人」になる以上は、「社会人」としての基本を理解しなくてはいけない。

もし、このコントで今田さんが喋ってしまったら。

もし、このコントで松本さんがノリツッコミをしなかったら。

コントは成り立たないよね。



「Mr. BATER」はかなりの変人だ。

だけどキミがこれから演じる「社会人」って役も。

同じくらい変わっているんだよ。


松本さんが外国人に扮装して、白いスーツを着たら「Mr. BATER」の役に入り込むように

キミもスーツを着たら「社会人」にならないといけない。


設定を理解しなければ、キミはまず、舞台に立つ事すらできない。


明日から始まるであろう「研修」とは、そんな「社会人」を演じるための基本を学ぶ機会だ。

会社はちゃんと、キミの基礎を作る準備をしてくれている。


吉本興業にだって、ちゃんと養成所があるだろ?

それと同じだ。

一生懸命、覚えて欲しい。


  • スーツ着てる人って、ほんとに偉いの?

ちょっと学ぶと、人は嬉しくなってしまうよね。

ただ、それを覚えたからといって、決して偉くなったわけじゃない。

それは「社会人」に近づいただけだ。


一ヶ月後。

ゴールデンウイークに、大学の後輩に会ったとしよう。

「社会人ってのはさあ〜ビールのラベルを上に向けて注がないといけないんだよね」

なんて後輩に大人ぶったうんちくをたれないで欲しい。


恥ずかしい話、4年前の僕は、「社会人」に近づいた事で、偉くなった気分でうんちくをたれていたよ。

タイムマシーンがあるなら、あの時の自分に会って、ビール瓶で背後からぶん殴ってやりたいよ。

ごめんね。僕の話はどうでも良いよね。


世の中的に見ると、「スーツを着て働く人」は「大人」だとか、「しっかりしてる」って偏見がある。

そう思わないかい?

だからきっとキミは、「スーツを着て働く人」になる道を望んだはずだ。


だけど、スーツを着て、一生懸命働いた僕が気づいた事がある。

それは「社会人になるためのルール」を知っていても知らなくても

人間としての中身はそんなに変わらないってこと。

本質は「社会人になるためのルール」を熟知していることではない。

ルールを活かして何をするかだ。


世の中的に見ると、「社会人になるためのルール」を知らない人を、少し下に見てる人もたくさんいるだろう。

そういう大人にならないで欲しい。

キミたちのお父さんくらいの年代の人達。

「社会人になるためのルール」が絶対だった人達は、このルールを存分に活かしてやって来た人達だ。

彼らはキミたちに

「ルールを守れないことは、恥ずかしいことだ」

と注意してくれるだろう。

ありがたく受け入れよう。キミはまだ何も知らないんだから。


だけど、スーツを着るキミは、「社会人になるためのルール」について習得した事を、

崇高なものだと思ってはいけない。


それはあくまでも過程であって、結果ではない。

知らないだけであって、恥ずかしい事ではない。

ひとつひとつ、学んで行けば良いんだ。

  • キミが今、世の中に与えられる影響とは

こんな不景気まっただ中の世の中。

明日の日本だって、どうなるかわからない不安感がまだある。

世の中の「社会人」は飲みに行って愚痴を言うしか無い。

時代のせいにして、上司のせいにして、取引先のせいにして。

そんな中、花見も自粛しろとか都知事の人が言ってる。

明日からも地震の影響のリカバリーに追われるかもしれない。



そこでキミにお願いがあるんだ。


キミが「世の中に影響を与えられる喜び」を会社で表現して欲しい。


想像して欲しい。
キミがこれから携わるであろう仕事の結果が


キミの家族の役に立ってたら。

キミの友達の役に立ってたら。

キミの好きな人の役に立ってたら。

東北地震の被災者の方の役に立ってたら。

知らない誰かの笑顔に繋がる可能性があるなら。



それは素晴らしい事だと思わないか?

学生時代には、いくら頑張ってもできなかった事かもしれない。

もしそう思ったなら。

「すごいですね!」

言葉に出して伝えて欲しい。


そもそも「社会人になるためのルール」なんて、へんてこなルールだ。

自分の会社は「弊社」、相手の会社は「御社」

電話やメールでは、知らない人でも「お世話になっております」

よくわからないあいづち「なるほどですね」

得意先の鈴木部長は「鈴木部長様」

自分の会社の鈴木部長は「鈴木部長」

自分の会社の鈴木部長を、得意先の鈴木部長に紹介するときは

「鈴木部長様、ご紹介します。弊社の鈴木です。」


しばらくすれば、こんなセリフのような言い回しも、

キミは台本無しにすらすら話せるようになるだろう。



いつか、「社会人になるためのルール」覚えたことによって。

キミが「社会人」の役を好演する事によって。


世の中に影響を与えられる可能性がある。


それってすごいことだよね。


実は、そんなシンプルな「世の中に与える影響」っていう視点。

キミが入った会社の「社会人」たちは当たり前になりすぎて、少し忘れてしまいがちなんだ。

自分のした仕事によって、世の中にどんな影響を与えられるのか?

こういう視点は「社会人」になると、だんだんと見失ってしまうんだ。

「社会人」を演じる事に必死で、それを見ているお客さんの反応なんて見えなくなってしまいがちなんだ。

それって、とても勿体ない事じゃないかな。


だから、キミは。

駆け出しで、まだセリフを覚える事に必死なキミは。


「社会人」というコントに出演できる喜びを、表現して欲しい。

なかなか光が見えない、こんな時だからこそ。

ちょっと恥ずかしいかもしれないけど。


そうすればきっと。

キミの周りの「社会人」達に元気を与えてくれると思うんだ。

そして、その言葉は日本中を元気にするかもしれないんだ。


キミの役は、どんなベテランでも真似できないものになる。

とても重要だと思うんだ。

  • 学べと言ってみたけど

偉そうに書いてきました。

一生懸命、学んで欲しいとか言ってみたけど。

僕は「社会人になるためのルール」なんて知らなくても良いと思っている。

結果が伴えば良いと思うんだ。



「社会人として責任を持って頑張ります。」

多分、研修が終わったらキミはこう思うだろう。

文章にして人事部に提出するか、同期の前でスピーチするかもしれない。

その思いはとても大事なことだ。


「社会人」になるとそれなりに大変な事に出会うかもしれない。

まじめな人は、こう思いがち。


「自分が悪いから。自分の能力が足りないから」


確かに僕もそう思って、頑張って成長してきた。

それが「責任感」というものだと思っていた。


だけど、そうやって自分を追い込んで、心が疲れちゃう人もたくさん見てきた。



ちょっと語弊があるかもしれないけど。

面白いコントに参加しているくらいの気持ちで良いと思うんだ。


キミの目の前で、「社会人かくあるべき」と語っている人事の鈴木部長も。

社内では仕事ができない鈴木部長で有名かもしれないし、家に帰ったら家族に相手にされない悲しいお父さんかもしれない。


それが「社会人」を演じさせたら立派な部長で、キミを採用した偉い人だ。


会社で起こる事。

それはすべて、おもしろおかしいルールで縛られたコントなんだ。

キミはそこで役を与えられているだけ。

もっと客観的に見て良い。本気で悩む事は無いんだ。

4月に色んな事を学ぶだろうけど。

その世界がキミの全てではない。


時には一生懸命頑張って。

時には一生懸命おもしろい、笑えるポイントを探して。


気楽に行こう。



  • さいごに

ところで、社会人の先輩である僕も「世の中に与えられる影響」っていう視点が見えなくなりがちなんだ。

だから、僕がお願いしたこと、そう。

「世の中に影響を与えられる喜び」を会社で表現することをちゃんと実践して欲しいんだ。


キミが言ってくれる一言を待っている。

僕とは違う会社だから関係ないかもしれないって?


そんなことないかもしれないよ。


もし僕が、小学校の時使った、おはじきとか時計が入っている「算数セット」を売る営業マンだったとしよう。


そして、そうだな。。。


キミは、話題となっていた「みずほ銀行のシステム障害」のプログラムを担当する下請け会社のSEだとしよう。

ほんとに下請けがあるのかなんて知らないよ?妄想だから。


連日、連夜。キミの先輩達は不眠不休で復旧作業を行ったに違いない。

キミがその仕事が世の中に与える影響について、つぶやいたとする。


「うちの会社の仕事って、たくさんの人たちの暮らしを支えてるんですね。。。」


ちょっと恥ずかしかったけど、言ったとしよう。


「呑気なこと言ってる、夢見がちな新人だな!そんな悠長なこと、こっちは考える暇なんて無かったのによ。」


先輩は、そんなことを思うかもしれない。

帰りに、酒屋でビールを買って行く。


「こんな時だけど、確かに、久々に人の役に立ってる事を実感できたかもな。ビールでも買って、1人で打ち上げでもするか。」


それによって、酒屋の主人が売り上げを達成する。


「地震の影響で、在庫もすっからかんになっちまったけど。売り上げは伸びたな。

貧乏だったけど、これで息子が欲しがっていた算数セットを買ってやる事ができるな。」


ようやく復帰した、みずほ銀行からお金をおろした酒屋の主人は、前から営業で回っていた僕に、声をかけてくれる。


「息子が酒屋になって計算に困らないように、やっぱり算数セットを買ってやる事にしましたよ。」


僕も売れない営業マンながら、酒屋の息子の笑顔に気持ちが温まって、自分の仕事の意味を改めて問う。



こうやって社会はつながっている可能性があるんだ。

その可能性に、ちょっと期待してみると「社会人」を演じることだって、とっても素敵な仕事だと思えないかな?



ちょっと展開がベタすぎるんじゃないかって?

さっき引き合いに出した「Mr. BATER(ミスター・ベーター)」のタイトルの由来は知ってるかな。

「名前のBATERはベタなボケをするいうところからの命名だと思われる」
wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/Mr._BATER

「社会人」は知らない人でもわかるように、わかりやすく伝えなきゃいけない。

これってとっても難しいことだね。


最初は、ベタにわかりやすく行こう。

部長や課長に気に入られるくらい、「社会人」を演じきろう。


そして、ルールを理解した上で。

オリジナリティを出して勝負しよう。

作られたルールを、偏見を。変えて行こうじゃないか。

そんなキミに負けないように、僕も頑張ろうと思うよ。


それでは、「新社会人」の皆さん。


明日から共に頑張ろう!!