浅野いにおが描く「うみべの女の子」の景色に思うこと

ようやく、普通の暮らしに戻りつつある、東京。

連日連夜の報道で、疲れ果てた官房長官と、無能だと言われる首相が映ってる。


本当はきちんと報道を見て、なんで官房長官が疲れてて、首相が無能だと言われてるのか。
なんで自衛隊が原発に水をぶっかけているのか。
冷却装置の仕組みだとか、本当に周囲の住民は安全なのか。
そういうのを理解する必要があるのかもしれない。

少なくとも、みんな興味を持っている。

だけど僕は、心が疲れてしまうような気がして、あまり見れなかったんだ。
もしかしたら向かい合う勇気がなかったのかもしれない。
世間で言う「大人」には自分はなれなそうだな。

また自信を失う。


しょうがないので1人で新宿へ行く。
新宿ルミネにある本屋で、ずっと探していた「おやすみプンプン」の新刊をようやく発見する。


その横に平積みしていた「うみべの女の子」を手に取った。
一緒に買ってしまった。

うみべの女の子 1 (F×COMICS)

うみべの女の子 1 (F×COMICS)

中学生の恋のお話。
なんだけど、かなり過激というか。

「うみべの女の子」はセックスがたくさん出てくる。
多分、中学生にしては高等で、ちょっと変態的な恋愛。

心が少し曲がってしまっている、だけどセックスで純粋なものを保っている。

そんな主人公達の葛藤を、浅野いにおらしい世界観で描く。
僕なんて中学生の時、セックスなんて夢の世界だったよな。ちくしょう。



浅野いにおが描く若者ってすげえな。

僕はいちいち思ってしまう。
小学生も中学生も高校生も。
いかにも哲学的な、人間の根源、根っこの部分をすごく考えていて、常に誰かにイライラしているんだ。


そりゃそんな若者、本当にいるのかよくわかんないんだけど。
そんな難しい事を若い頃、浅野いにおは考えてたのだろうかと思うと、
自分の学生時代の思考能力の低さと、それでも生きられた環境の素晴らしさに
ちょっと落ち込み、ちょっとホッとする。



浅野いにおが描く景色ってすげえな。

僕はとんでもなく好きなんだ。
おやすみプンプン」「ソラニン」では新宿駅、小田急線、多摩川。
とてつもないリアル感があって、自分もマンガの主人公になれる気持ちがするんだ。


「うみべの女の子」は海と街並が出てくる。どこの街をモチーフにしてんだろうか。
海岸、防波堤、夜の海。とても綺麗で、なにか物悲しい、海がある街。


何気に読んだけど、この海辺の街の景色。
すごくタイムリーだなと思った。


今回の「東北地方太平洋沖地震」で海辺の街は壊滅状態になってしまった。
壊滅後の映像しか見てないけども、海辺の街は穏やかで、こんなに綺麗だったのだろうか。
もしかしたらこんな物語があったのだろうか。

炊き出しをして、トイレの水をプールからくみ出す、携帯のメールがつながった事に喜ぶ女子中学生。
自分の家が流されて、辛かった。そんな話をする、男子高校生。
僕がこの本を読み終えた、深夜2時頃。
日本テレビの放送がリアルな現状を伝えてくれた。


浅野いにおが描く世界って、こういう時、すごく陳腐に見えてしまう気もする。

心を満たすために、人と触れ合い、葛藤するってのは、ちゃんと「暮らし」が成り立っているからなのだろう。


被災地の子供達はすごい経験をしている。
心を満たす前に、生きなきゃならなくなってしまった。
与えられてきた「暮らし」を取り戻そうとしているんだ。
とんでもなく大変だろう。そして、成長するだろう。


必死で生きなきゃいけないのに、何考え込んで、生意気言ってんの?
今、テレビに映る女子中学生に「うみべの女の子」を読んだら、
もしかしたらそんな事言うかもしれない。

彼らは、また元の生活に戻って、「暮らし」以外の事に悩む日々がやってくるのかな。
ちょっと落ち着いたら、また浅野いにおがどんぴしゃにハマるのかな。
早くそんな日が来れば良いなと思った。


近所のコンビニにパンを買いに行っても何にも無かった。
偶然切れた時計の単2電池も、見当たらなかった。

最初にようやく普通の暮らしに戻りつつあるなんて言ったけど、そんな事無かったか。

こんな僕は東京で、何ができるのだろうか。
ちょっとでも頑張る事しかないのだろうか。